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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
殊に秀吉の前には、杯と人とがかたまっていた。
そこへまたひとり出て、
「おながれを」
と、改まって乞うた者がある。柴田勝家が自慢の臣、佐久間玄蕃允盛政であった。
玄蕃の驍勇無双なことは、北越の戦陣で久しく鳴りとどろいているものだった。
(――佐久間玄蕃に二度出会った敵はない)
と、いうことばすらあるほどである。
勝家の愛し方は一通りでない。何かといえば、
(わが家の玄蕃は)
と、口癖にいい、
(甥めが、かように働いて)
とか、自慢たらたら、彼の武功を吹聴すること、他愛ないくらいであった。
勝家には、甥もたくさんいるが、彼が、「甥めが」といえば、それは玄蕃をさすことであった。
そして、その玄蕃盛政は、まだ二十九という若さであるに関わらず、柴田一族の上将として加賀の尾山城に住み、ここに在る諸大名とくらべても、何ら遜色ないほどな封地と待遇をうけていた。
「……おう、筑州どの。ひとつその男に遣わされい。――甥めが、お杯を所望と申しおる」
勝家は側から云い添えた。
それに初めて気づいたように、
「甥御とは?」
と、秀吉は見まわして、
「やあ、これは」
と、玄蕃の男振りを見まもった。