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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
……いずれは、勝家、一益などがくどくど申すであろうが、お許の耄碌こそ倖せ、耳の遠い顔して、何事も聞きながし、そのまま関へ立ち帰るがよい」
「お云いふくめの儀、よう分りましてござりまする」
老齢七十六の武者大島雲八は、海老のように曲った腰にも、なお一筋の槍は手離さず、一礼して立つと、大鎧にかためた身を重たげに旋らして、そこからゆさゆさとあとへ引っ返して行った。
山門前の往来には、寺中あらましの人数がもう出揃っていた。一旗一旗の指物を目じるしとして、部隊は幾組にもわかれ、その組先には、各部将が馬を立てている。
火縄の火はチラホラしているが、一火の松明も点じていない。
それに、その夜の月影も、いと細く。
並木つづきに、七百の兵馬は、渚の波のように、静かに、黒々と、たゆとうていた。
「弥兵衛やい。――弥兵衛やい」
秀吉は、呼ばわりながら、将士の列のすぐそばを歩いて行った。並木の蔭なので、人影もさだかでない。わずか、六、七名をうしろに連れた背の低い小男が、竹の杖で地を叩いて通るので、小荷駄の組頭か――ぐらいにみな思っていたが――秀吉であったと気づくと、さらに粛となった兵馬が、彼のためにみな少しずつ馬蹄を避けた。