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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
が、この無為は、柴田勝家にとっては、あながち無意義でもなかったらしい。
彼と神戸信孝との間には人目立つほど日々往き来が交わされていた。
といっても、こう二人の頻繁な会合が、直ちに、政治的な意味をふくむものとは云い切れない。――なぜならば、今は勝家の愛妻として、世にかくれないお市の方は、いうまでもなく、故信長の妹であり、信孝には、叔母にあたるひとである。
しかも。――近年のことにはなるが――そのお市の方を説き、信長にも乞い、彼女を勝家の室へ再嫁させることに運動した者も信孝であった。こうして信孝と勝家とは、その頃からすでに単なる姻戚以上の関係にあり、いわば切っても切れぬ仲だったのである。
で、そう二者の往来が、二者のあいだに止まっているなら、世人も何らこれを疑う理由もあるまいが、ふたりの会合ごとに、必ずそこには滝川一益も加わっていることが記憶されるについて、
(また何のお顔寄せか)
と、意味ありげにそれを見、
(秀吉退治の相談が、ぼつぼつ進んでいるものとみえる)
などと早くも、不穏なうわさと、その実現が、この夏中にもあるようにいわれ出していた。
折も折、その月の十日に、滝川一益は、宿所の待月軒に釜をかけて、朝茶の会の招きを諸侯へ出した。