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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

悪くて、

(さだめし、あの手紙をうけた人は、無学にも程があると、嗤っているだろう)

とか、

(祐筆ともある自分が、いかにも物を知らないようで、末代まで恥かしい。何とかして、あの手紙をもらい戻して、焼いて捨てたいものだ)

とか、いつまでも、恋々とこだわって、気にかかる顔をしていた。秀吉はたくさんな客に会い、また以来不沙汰の毛利家へ、その夕、使いを出したりしていたが、煩事一掃のあと、やっと由己をあいてに一の茶をのみながら、

「どうした? 由己」

と彼のすぐれない顔つきを質した。由己も、こういう時ならと、彼の気色を察して、先刻の、無茶な宛字の愚痴を述懐すると、秀吉は、途方もない声して、いつまでもおかしがった。

「なんじゃあ? 祐筆の身として、あのような無学な書面が残っては恥になると。……はははは。由己よ、そちでも、自分の筆蹟が、千年も世に残ってゆくと思うておるのか。安心せい、お汝あたりの筆では、まず百年も世にあるまい。おまえが生きている間だけでもどうかな? ……よくしたものぞ、世は滔々と、無用の文字は塵に流して余しはせぬよ」

そしてまた、云った。

「お汝らのように、醍醐とは、こう書いたやら、ああ書いたやら……などと首をひねったり、筆の穂をなめたりして、この多忙な一日を暮していては、何と、今日のように、日月も世情も、車輪