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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

それだな。五ヵ国を割いて献じるといえば大譲歩しているようだが、備後一国をのぞくほかは、今なお争奪の地で、必ずしも、毛利方の領下として治められている地ではない」

「仰せのとおりです」

「さるを唯々として宗治の一命をも助け、和議に応じるわけにはゆかない。これは信長公の御意を俟つまでもないことだった。勝敗の決はすでにわが手にあるのだから。――しかし今となると、この機会は、だいぶちがって参った。この和を逸してはならぬことになった」

「まことに、ここは間髪、伸るか反るかの大機と存ぜられます」

「敵の毛利が、京都の変を知るがさいご、到底、和議はむずかしい。戦いの主導は彼の手にうつり、必然、大勢すべてわれの不利となる。……が、毛利はなお気づいてはおるまい。おそらくはまだ」

と、秀吉は語尾に力をこめて、もういちど、

「おそらくはまだ何事も知っていまい。――天のわれにかし給える数刻の時は――敵がそれを知るまでの遑でしかない。大機をつかみ、大策を施すも、そのわずかな間にのみ限られておるのだ。一刻一刻が、いまほど尊いときもない」

「まだ今夜は、三日の真夜半、ようやく子の刻(十二時)頃と思われます。