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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
林佐渡と美作の兄弟は、倉皇として、信長の前へ、挨拶に出たが、侍女や家来たちの慌てぶりを、見ていられない顔して、一度、中坐して退って来た。
「午刻でもあるし、遠乗りの御空腹もあろうで、すぐまた、お中食――と仰せ出されるかも知れぬ。早く厨の膳部の者へ、料理の手廻しを、申しつけておけい」
佐渡が、そう吩咐けていると、弟の美作守が袖を引いて、
「兄上、――あちらで柴田殿が、ちょっとお顔を拝借したいと申されていますが」
と、囁いた。
頷いて、佐渡も小声に、
「うむ。今参る。……そちも先へ行っておれ」
と、いった。
その日も、柴田権六勝家は、那古屋城へ来ていたのである。何か密談をすました後、さて、帰ろうかと立ちかけたところへ、突然、主君信長の来臨という玄関の騒ぎに、出てはまずいし、帰ることもできず、度を失って、小書院の隠れ座敷へあわててはいり込んでいたものだった。
そこへ美作が来、林佐渡も後から来て、三名、ほっと吐息をつきながら、額を寄せ合った。
「だしぬけだ! ……いや驚いたな」
「何かにつけて、この調子だから、定石で行くと手が狂う。およそ、何が測り難いというて、うつけ者の出来心ほど怖いものはない」