輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《新生(しんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 頁
鎌倉には岸本を待つという一人の友人もあったからで。
汽車は鶴見を過ぎた。しとしと降る雨は硝子窓の外を伝って流れていた。その駅にも、岸本は窓から別れを告げて行こうとした知合の人があったが、果さなかった。硝子に映ったり消えたりする駅夫も、乗降する客も、しょんぼりと小さな停車場の歩廊に立つ人も、一人として細い雨に濡れて見えないものは無かった。
鎌倉で岸本を待っていたのは、信濃の山の上に彼が七年も暮した頃からの志賀の友人で、この人の細君や、細君の叔母さんに当る人は園子の友達でもあった。この特別な親しみのある人は神戸行の途中で岸本を引留めて、小半日代々木とも一緒に話し暮したばかりでなく、別離の意を尽すために鎌倉から更に箱根の塔の沢までも先立って案内して行った。旅の途中の小さな旅の楽しさ、塔の沢へ行って見る山の裾の雪、青木や菅や足立などと曾て遊んだことのある若かった日までも想い起させるような早川の音、それらの忘れ難い印象が誰にも言うことの出来ない岸本の心の内部の無言な光景と混合った。
代々木、志賀の親しい友達を前に置いて、ある温泉宿の二階座敷で互に別れの酒を酌みかわした時にも、岸本は何事も訴えることが出来なかった。