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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
――あたしの顔をつぶすのか――お雪は外出するのも厭な気持ちになってしまった。
お雪には、モルガンに、他に増花が出来たという噂がたつことが、何よりも愁いのだった。
だから、あんなに恋しかった日本も京都も、長居する場処でないとなると、フランスに帰ろうというよりほかはない。
「どうして、アメリカへお出にならないんです。」
と聞かれでもすると、モルガンが、フランスが好きなのですと答えたが、其処には、この夫婦が口にしないで、いたわりあっている、夫婦の間でも秘密にしていることがあったのだ。
――姉さんたちも、お母さんも、楽々と暮しているようだ――
それで好いのだ、わたしに後の心配はすこしもない。とお雪は叫びたかった。四万円の身の代金で姉さんは加藤楼の女将になっている。百五十円の月手当は老母の小遣いには、多いからとて少なくはない。
お雪は、ミモザの花と日光の黄金の光りのなかに、蜂のように身軽にベンチから跳ねおきて、
「さあ、もう、あたしは明るくなった。」
と、しっとりと濡れた心を、振りゆすって言った。
「カジノへ行って見ましょうか、あたしでも賭に勝つかしら。」
「いいえ、僕は、こんな快い気持ちのときに、君の胡弓が聴きたいのだ。