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とうきょうじんのだらくじだい
東京人の堕落時代
杉山 萠円
線上閱讀杉山 萠円《東京人の堕落時代(とうきょうじんのだらくじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 頁
皆伏し目勝ちにして、時たまニコリする位のことで、それが又特徴になっている。聞けばここの女給は或る限られた地方から、或る手段で連れて来て仕込んだもので、うっかり口を利かせると売れ口に関係するのだそうな。つまり顔と肉体美だけを見せ付ける方針らしい。
それかあらぬか、ここのお客には凄いのが多い。浅草辺のゴロ付き、隠れたる凄腕記者、何々団の壮士、札付きの主義者なぞが、あちらの机、こちらの椅子に陣取って、チビリチビリやりながら、用あり気に出入りのお客に眼を光らしている。
これに対して、店の入口の処にコック帽の男が一人、そのうしろの机に背広服が一人、帳場に禿頭一人、女給頭一人と居て、なかなか監視が厳重である。こんな処ではなかなか女給と直接交渉(一名万引き)は出来ない。
ところで尚このほかに、今一人、背広に縞ズボンのリュウとした男がブラブラしていて、時々テーブルの傍へ来て、お客の顔を見ながらヒョコリとお辞儀をする。ニコリと笑うこともあれば、
「入らっしゃいませ」
とも云う。
この男を呼び付けて女給の番号を云うと、喰ってもいない洋食の勘定書を持って来る。又はお酒の代として、別勘定にして来ることもあるそうである(この式で只口先だけでいくらと払わせるのも、ほかにいくらもある)。