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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

線上閱讀杉山 萠円《東京人の堕落時代(とうきょうじんのだらくじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 頁

青空文庫

鳥打と中折れ

勿論、いいも悪いもわからない。

彼等はこうして浅草公園内を全世界として、何の苦もなく、喰い且つ遊んでいる。そうして物心が付いて人間世界のわびしさを知る頃になると、何処へともなく消えて行く。

彼等の生涯は影のように無意味である。彼等の魂は天使のように悪を知らぬ。

あらゆる人間苦を集めた大都会の寂しい反映でなくて何であろう。

享楽の浅草の中心に沁み出た、はかない哀愁の影でなくて何であろう。

鳥打と中折れ

昨年の十月の或る日の正午――。

雨上りの青空が浅草観音堂の上一面にピカピカと光っていた。

瓜生岩子の銅像の横のベンチに、青い派手な鳥打帽と、黒のジミな中折れ帽が腰をかけていた。黒の中折れは何か気味悪そうに青い鳥打の話をきいていた。二人共まだ若かった。

記者はその横に腰をかけて、懐中からノートを出して何やら書いていた。

青い鳥打帽が二三度話をやめて記者をジッと見ていたが、突然声をかけた。

「オイ、オトッツァン。済まないが退いてくんないか。こちらの話の邪魔になるから」

記者はドキンとして顔をツルリと撫でた……風邪が抜けないので鬚蓬々としていた。次に帽子を冠り直した……古ぼけた茶の中折れであった。