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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
夕焼が色褪せ、薄暗さがあちこちの隅にたまり始めている。しばらく歩くと石段があった。それを一歩一歩登る時、五郎は膝頭や踵ににぶい痛みを感じた。石段を登り切ると、校庭になる。石像が二つ、十米ほど離れて立っている。その間に一本の大樹がそびえている。その像も樹も、彼の記憶には全然なかった。五郎は言った。
「見覚えないな」
「これ、ミツギという樹なのよ」
女は説明した。
「あたしの小学校の時も、同じ大ききで、同じ形で立っていた。ずいぶん古くから生えてるわけね。何百年も」
「そうだろうな。別におれと関係ないことだけど」
五郎はその樹の下に腰をおろした。女も団扇を敷いて腰をおろす。さっきのダチュラの樹が眼下にあり、湾がそこからひろがっていた。彼は紙コップに酒を充たし、女の方に差出した。
「飲まないか」
「ええ。いただきます」
女は素直に受取った。五郎は指差した。
「あそこの林は、松の木がもっともっと生えていた。そしてアルコール缶が、いくつも転がっていたよ」
「そう。十年ぐらい前に切り倒して、キャンプ場にしたらしいの」
女は酒に口をつけた。
「ところがいっぺんあそこにキャンプを張った人は、翌年は絶対に来ないのよ」