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えどげいじゅつろん

江戸芸術論

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 頁

青空文庫

ゴンクウルの歌麿伝は正にその鼻祖なり(欧米における浮世絵研究の一章を参照せよ)。該書は十八世紀日本美術なる総称の下に『青楼の画家歌麿』と題せられ全巻を二篇に分てり。第一篇は専ら『浮世絵類考』に基きて歌麿が生涯を記述し、漸次制作の錦絵につきて解説に批評を交へまたこれに必要なる日本一般の風俗伝説につきて懇切に記述する所あり。第二篇は歌麿の制作を分類して肉筆及黄表紙絵本類の板下並に錦絵摺物秘戯画等となし、各品につき精細にその画様と色彩とを説明せり。

今これを通読するに画家の伝記は従来の『浮世絵類考』に拠りたるがためその誤謬をも合せ伝へたる点尠からず。また評論中にはひたすら重きを歌麿に置かんと欲せしが故か動もすればその以前の画工鳥居清長鈴木春信らを軽ぜんとする傾あり。今日浮世絵の研究は米国人フェノロサその他新進の鑑賞家出でて細大漏す処なく完了せられたるの後溯つてゴンクウルの所論を窺へば往々全豹を見ずして一斑に拘泥したるの譏を免れざるべし。然れどもゴンクウルは衆に先じて浮世絵に着目したる最初の一人たり。その著歌麿伝の価値は此の如き白璧の微瑕によりて上下するものに非ず。