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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁

青空文庫

六

女たちは手をたゝいてはやした。しかし、そんなことに北原ミユキは頓着なく、受けとつた紙ぎれを小さくたゝんで帯の間へしまつた。

彼女は尾関が急に話したいことがあるという、その話の内容は察しかねたけれども、しかし、なんとなくそれを早くきゝたかつた。

受けもちの客を送りだすと、彼女は、今夜ははやく帰つて、ぐつすり眠つておこうと思つた。

六

病院はすぐにわかつた。皮膚泌尿科、花柳病科という看板に、彼女はちよつとへんな気がした。しかし、尾関の病気は、まさか、そんなわるい病気だとは信じられなかつた。消毒薬のどぎつい臭いがつんと鼻にくる。そこと教えられた病室の前で彼女はしばらくためらう。

と、ドアが中から開いて、看護婦が注射器をもつて出て来た。その眼が、じろりと彼女に注がれる。

「いま、よろしいでしようか?」

「ご面会ですか? どうぞ」

と、看護婦は、言いすてゝ、さつさと行つてしまう。

畳敷のわりに明るい病室である。

不精ひげを生やした尾関があおむけに寝ている。

「おや、来たね。座ブトンなんかないんだ。まあ、すわりたまえ」

「しばらくおみえにならないと思つたら……どこがおわるいの?」