輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ひのとびら

火の扉

岸田 国士

線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁

青空文庫

四

小生は、なにものも失つたという気はしません。そう申すことをお許しくださいますか」

四

井出康子が上諏訪駅へ着いたのは夜の十時すぎであつた。息子をひとり家へ残しておくことは気がかりであつたが、まさか今度は連れてくるわけにいかず、同居人の細君の一人に二三日の世話を頼んで、思いきつて出かけて来た。比較的こまぬというので、こんなに遅く着く汽車をえらんだのだが、駅には、ちやんと市ノ瀬牧人が迎えに出ていた。土地の農業会から紹介してくれたという宿屋も、ころあいの宿屋らしかつた。そこへ彼女を送り込み、市ノ瀬は、友人のところへ泊るといつて玄関から上りもせず、あすの朝九時ごろに来てもいゝかと念を押して、そのまゝ出て行つた。

北原ミユキの実家は、湖水の西南岸を占める丘陵の中腹で、近ごろはトラックもめつたに通らず、上諏訪からは、二里ほどの道を歩くか、さもなければ特別に漁船を頼んで近くの岸まで運んでもらうかしなければならないという話であつた。

翌朝、市ノ瀬牧人は、手まわしよくボートを用意して彼女を迎えに来た。行先の道順を詳しく書いたものをみせ、けさ地方事務所へ寄つて調べて来たのだという。