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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁
「どうかしなすつたの? そんなにしてないで、ひと口おあがんなさいよ」
と、婆さんは朝からそのまゝになつているぜんを見おろしながら言つた。
「ほうつといて……。わたし、病気じやないんだから……」
「病気でなけりやあ、なおさら、ご飯をたべなきや……。先生にしかられなすつたんだね」
婆さんが出て行くと、彼女はやつと床の上にすわつた。どうしても鏡を見るのがいやであつた。
すると、ひる過ぎの、まだ日のかんかん照つている最中、表玄関のベルが鳴つて、取次ぎに出た婆さんが、駆け込むように彼女の部屋へはいつて来た――
「ちよつと、ちよつと、あんたにお客さまですよ。井出さんとおつしやる立派な奥さんですよ」
「あら、そう……」
と、彼女は、おどる胸をおさえながら、軽く答え、どうしようかと迷つた。
「こゝ片づけてお通しするわ。おばさん、ちよつと手伝つて……。困つたなあ」
思案にあまるというように、彼女は、寝間着の帯をときはじめる。
やつと、部屋が片づき、着物を着かえ、急いで髪をときつけて、ぬれ手ぬぐいで顔をごし/\こすりはじめた時、江原がそこへすがたをみせた。
八
「お客さんはアトリエへお通ししとくからね。