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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

黒吉は、話題を変えて、話しかけた。

「あら、そんな……不自由な体で――」

「でも、俺にゃ、あの宙乗りの気持が忘れられないんだ。何も彼も忘れて飛びたい――」

「でもね、……あなたにいうのは、却って逆だけれど、あの宙乗りは、ほんとの呼吸もんでしょう、ブランコと呼吸とがピッタリ合わなけりゃ危ないわよ」

「そうさ――」

「それが、それが、片足になったら、その呼吸が全然違うじゃないの――片足で振る時と、両足で勢いをつけるのとじゃ、まるで違うわ……恐らく、あの半分も飛べないわ」

「ううん……」

(そうだ、いかにもそうだ……)

黒吉は、がっかりして考え込んでしまった。

(俺には、もうあの曲芸が出来ないのか――)

(宙を飛ぶことが出来ないのか――)

「由っちゃん、何かいい工風はないかしら。何でもいい、何でもいいから、俺はこの体を、思いきり、ぶっ飛ばしてみたいのだ、ね、ね、いっそ、高い山から飛下りてやろうか――」

黒吉は歯を鳴らしていた。

「君、君」

あの老医が廻って来た。

「そう興奮してはいかんね、どうした」

「ああ、先生、先生、空を飛ぶ商売はないでしょうか、思い切り飛べるような、足がなくてもいいような――」