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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

「相当やられたな……」

「なあに……。これだ、これを見ろよ」

村田の指さすのを見ると、その納屋の二階の薄暗い片隅に、大型トランク位の鉄製の箱が置かれ、むき出しの天井を匐っている配電線に結ばれていた。

村田は、その電線を引千切りながら

「これだよ、これが眠り病の正体だ――」

「えッ、こ、これが眠り病の――」

「そうさ」

「そうさ、って君、これはただの箱じゃないか、眠り病というからには何んか……、それともこの箱が眠り病の病菌の巣かなんかで……」

「いやいや、これは機械だよ」

「機械――?」

「そうさ、いま東京中に猖獗している嗜眠性脳炎を病理学的にやろうとしたのが間違いなのさ、思えばずいぶん無駄な努力をしたもんだ、いくら顕微鏡なんかを覗いたって病原体なんか見つかる筈がない」

「というと」

「つまり、これは大陰謀なんだ、帝都を眠り病の死都と化さしめようという、恐るべき大陰謀だってことが、タッタ今わかった……」

途端に、納屋の外で、美都子の悲鳴が起った。慌てて駈下りて見ると、縛り上げられた男が、やっと気づいたと見えて、むくむく動き出しているところであった。

早速自転車を馳しらせて、一応警察の方にその男の始末を頼んで置き、意気揚々とした村田を真中に、喜村の家にかえって来た。