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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
そして、何時か、このガランとした小屋の中には、蒲団係りの源二郎爺さんと、子供の座員だけが、ぽつんぽつんと取り残されていた。子供の座員は、外出を禁じられていた。それは勿論「脱走」に備えたものだった。その見張りの役が、今は老耄れて仕舞ったが、昔はこの一座を背負って立った源二郎爺なのだ。
結局、幼い彼等は、小屋の中で、てんでに遊ぶより仕方がなかった。
男の子は男同志で、舞台を駈廻り、女の子は女らしく、固って縄飛びをしていた。――そして、黒吉は、相変らず小屋の隅に、ぽつんと独りだった。
しかし、何時になく、黒吉の眼は、何か一心に見詰めているようだ。
(この憂欝な、オドオドした少年が、一生懸命に見ているものは、何んだろう)
誰でも、彼の平生を知っているものが、この様子に気付いたならば、一寸頸をかしげたに相違ない。そして、何気なくこの少年の視線を追って見たならば、或はハッと眼を伏せたかも知れないのだ。
黒吉の恰度眼の前では、少女の座員たちが、簡単服を着て、縄飛びをしていた――。しかし彼の見ているのは、それではなかった。この少女達が、急よく自分の背丈位もある縄を飛んで、トンと下りると、その瞬間、簡単服のスカートは、風を受けて乱れ、そこから覗くのは、ふっくりとした白い腿だった――。