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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

三

とが、愉しそうに、話し合ったり、手を握り合ったりしているのを見つけて、怪訝な顔をしていた。

三

源二郎爺が、最初に感じた「怪訝」は、やがて一座の全員に、たった一人葉子だけを除いて――拡がって行った。

「虫」と綽名された、陰気な、芸の無器用な鴉黒吉が、まるで生れ変ったように、夢中になって、暇さえあれば、曲芸の稽古を始めたのだ。

それは如何にも、驚くべき変化だった。オドオドとした女々しい黒吉が、少年本来の「快活」を取戻したのだろうか――、それにしても、その稽古は余りに激烈な、血の滲むようなものだった。

黒吉の、少年らしく、まだ潤んだ眼は、蜘蛛の巣のような血脈に上気し、固く喰いしばられた唇からは、いまにも鮮血が、タラタラと滴りはしないか、と危ぶまれた。

時々彼の体は、宙を飛んで、羽目板に叩付られる事があった。それでも、つい漏らす呻き声の外、黒吉は矢張り、歯を見せようとはしなかった。

しかし、その肉と骨との相尅するような、鈍い、陰惨な音を聴くと、却って、不思議そうに見守っていた他の座員達の方が、或る者は思わず唇を噛締め、又或る者は顔を外向ける程だった。そして、厳格な、氷のような団長ですら、ただ唖然とするばかりだった。