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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
四ノ二
「え、ほんとか……」
そこに居合せたものは、思わず義公の亢奮した顔を見詰めた。
四ノ二
義公は、不意に、一同の視線を浴びて、その可愛いい顔をぼーっと上気させながら、それでもすぐ続けた。
「ほんとだとも。俺ア、ハッキリ視たんだ。それも鞭で撲られてたぜ」
誰も、返事をするものはなかった。
「……だけど、だけど黒公の奴、平気なんだ。喜んで撲られてやがんだ。葉ちゃんとにやにや話しながら撲られてんだぜ……」
そういうと、義公も不審気に頸を傾げた。勿論、いま聞いたばかりの仙次を始め他の座員に、その不思議な悦楽の原因なぞ、解る筈はなかった。
悦楽――如何にもそれは、恐ろしきたのしみだった。が、葉子の美しい肉体の中には、黒吉の猛練習が生んだ、血と肉と骨の相尅する陶酔境が、空を切る鞭の下に、生々しく甦えり、彼女を甘美な夢に誘うのだった。
そして又、黒吉は、この乱れ飛ぶ鞭の下に、なお、欣然としているのだ。
彼は、眼の前に荒れ狂う、美しき野獣の姿に、尚新たな慾感を覚えたのだ。
この暴風のような、狂踊が済むと、後は雨のような愛撫だった。黒吉は葉子の汗ばんだ、指のつけ根が靨のように凹んでいる、柔らかい掌を、肩に感じると、胸には熱く息吹くくなくなとした乳房を受けた。