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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

「なぜ――」

「なぜって……」

「そんなこと、いったって仕様がないじゃないか」

(俺にゃ、葉子は忘れられない!)

「余計なこというなよ」

黒吉は、そっけなく、早口に吐出した。

「でも、でも、どうせあんたが不幸になりそうなんだもん」

「へんなこと、いうじゃないか。どうせ俺ア不幸だよ、――由坊みたいに綺麗じゃないからな……」

「まア黒ちゃん、ソンナこというもんじゃないわよ、あんた、あたしを疑ぐってんの、そんなに僻むもんじゃないわよ」

由子も、自分の言葉に我れしらず亢奮して眼を見張った。

「あんた、知らないのね。やっぱり男の子って細かいところに気がつかないのね、葉ちゃんの恐ろしいくせ、知らないの……」

(葉ちゃんの、恐ろしいくせ――)

黒吉は、朧気ながら、思い当るような気がした。

「恐ろしいくせって……」

「葉ちゃんたら、とても慘酷しいのよ、アンナ綺麗な顔してるくせに――、あんた気がつかないの」

(やっぱり、そうか)

黒吉は、黙って、首を振った。

「とっても凄いの、鼠でも、蛙でも、蛇でも、平気で引裂いて殺しちまうのよ。でも、自分でも、あたしにだけ時々いうわ、あたし、時々血を見ないと、くさくさするのよ――って恐いわ。