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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

目をつぶった自分の耳元で、その「おんな」が、何かぼそぼそと囁いたようであったが、それは何んであったかよく聴えなかったし、又「聴こう――」とするのもカッタルかった。ただ体中まるでヒビのはいったように、熱っぽく苦痛であった……。

……それから一週間以上もたったであろうか、もともと体の人一倍丈夫だった黒吉は、目に見えて、どんどん恢復して行った。

そして口がきけるようになると、先ず最初に聞いたのは、勿論極東曲馬団の消息であった。しかし回診に来た医者が、気の毒そうに小声で答えたその返事は、黒吉を、又も深い深い谷底へ蹴落してしまったのだ。

「あの曲馬団は解散してしまったんですよ……」

そういった医者の言葉は、あの小屋の天空から、真ッ逆様に墜落した時よりも、モットモットひどい失望を、彼に与えた。

「先生、俺助かるでしょうか……」

「大丈夫だとも、全く運がよかったんだよ、落ちたところが砂の上だったからね」

「……」

「どうしたい、痛いかね」

「ううん、俺、死んだ方がよかったなあ、その方がサッパリすらあ……極東が解散しちゃ飯の喰上げで……」

(なによりも、葉ちゃんと別れなければならない)