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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

生きてる佐渡平

なお細かい手配りや注意については、羅門塔十郎が剃刀で断つように、きびきびと、抜け目なく、頭脳のいい指図をした。

生きてる佐渡平

「ゆるせ」

軒の紺暖簾が卸されてから間もない宵のうち。

佐渡平の店は、大戸をおろして、店のひとみ障子の潜りが二枚だけ、黄いろい灯を往来に映していた。

東儀与力はずっとはいった。

「内儀はおるか」

「どなた様でござりましょうか」

――と店の者。

「八丁堀の者じゃ。東儀三郎兵衛」

「あ、お見それいたしました。……まず、どうぞこちらへ」

と、帳場のわきへ、座蒲団をすすめる。

「内儀に会って、ちと、密談したいことがあって罷り越したのじゃ。取次いでくれい」

「それはどうも、わざわざ、恐れ入りまするが、実はお内儀様は、昨日、ご親類の老人を連れて、相州の塔の沢へ、入湯にお出ましになりまして……しばらくはその」

東儀は眉をひそめた。主人の佐渡平が非業な死を遂げてからまだ間もないのに、その妻が入湯に行くなどとは、不貞とも不埒とも、言いようのない悪妻だと憤った。

その顔いろを、畏る畏る仰いで、店の者は、

「何か、ご用の筋がございますならば、奥に番頭もおりますゆえ、すぐにこれへ」