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そうもくちゅうぎょ

艸木虫魚

薄田 泣菫

線上閱讀薄田 泣菫《艸木虫魚(そうもくちゅうぎょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,254 字 · 226 頁

青空文庫

立秋からもう十日も経っているのに、相変らず暑い。

K氏来訪。開け放った応接室の窓越しに、ちらと畑の方へ眼をやりながら言った。

「あの向日葵はロシヤ種でしょう。あの実をロシヤ人が噛み割る方法を御存じですか。」

「いや、知りません。どんなにします。」

「それがおかしいんです。まず向日葵の実を一つ歯の間に噛んでおいて、そして……。」K氏は大きな両手でもって妙な恰好をしてみせた。「左の手で頭のてっぺんを押えつけて、右の掌面でいきなり強く下顎をこづき上るんです。こうやって。いかにもロシヤ人らしい食べ方でしょう。」

私はそれを見て、思わず噴き出した。

「まさか……。」

「いや、ほんとうのことですよ。」K氏は不足らしく言った。「私は独逸の田舎の停車場で、若いロシヤの労働者が、柵にもたれてそれをやっているのを見たんです。嘘だとお思いなら、その時一緒にいた私の友人の独逸人に訊いてみて下さい。」

「その独逸人は、どこにいるんです。」

私は物ずきにも訊いてみた。

「今伯林にいますよ。」

K氏が帰った後へ入れかわりにB夫人来訪。夫人は信神の念のあつい妙好人である。

午すぎの室のうちは、息苦しいほどに熱かった。