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そうもくちゅうぎょ

艸木虫魚

薄田 泣菫

線上閱讀薄田 泣菫《艸木虫魚(そうもくちゅうぎょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,254 字 · 226 頁

青空文庫

徳富健次郎氏

1

「あの先生の酒は、物の味を肴にするのじゃなくて、感興を肴にするのだ。私というものも、つまりは八瀬の蕗の薹と同じように、先生にとって一つの肴に過ぎなかったのだ――たしかにそうだ。」

徳富健次郎氏

1

徳富健次郎氏が歿くなった。重病のことだったし、どうかとも思う疑いはあったが、いつも看護の人達にむかって、

「生きたい。まだ死にたくない。」

と、力強い声で叫んでいたということを聞き、因縁の深い、好きな伊香保へ往って、湯に浸りながら療養を尽しているということを聞くにつけて、この分ならば遠からずきっと快くなるだろうと思っていたのに、とうとう歿くなってしまったのは、残念の限りである。

徳富氏と私との交遊については、二、三年前刊行した私の『泣菫文集』に書いたことがあるから、ここにはなるべくそれに洩れた事柄を断片的に記して、この老文人がありし日の面影をしのびたいと思う。尤も話の都合上、前後聯絡のあるものは、記述が文集のそれと多少重複するかも知れないが、その辺は止むを得ないこととして、どうか大目に見てもらいたい。

私が初めて徳富氏に会ったのは、明治三十四、五年の頃で、その頃氏が住っていた東京の郊外渋谷の家でだった。