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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

その平地の一端に水溜りほどな池があって、太刀洗いの池といわれたものだという。

豊前民謡に

わしが心と巌流島は

ほかに木はない松ばかり

と謡われていたそうだが、土地の古老や郷土史家が朝日支社の「宮本武蔵座談会」で話している筆記を見ると、松ばかりというのは、下関や小倉から見た遠望の観念なのであろう。その席上で古老の云っている一節をここに借録してみるなら、

――左様。……今は形も変り樹も少なくなっていますが、以前はもっと目につく島でありました。私が知ってからでも、松と山桃それに笹が沢山生えていまして、松は相当に数があり、大きいのは一抱えぐらいのやつが両方の高見にずっと茂っていました。島のまん中は平地で、砂浜になって干潮の時は遠浅の洲に続きます。漁に出て休む時は、潮のかげんでそこに舟をよせたものです。それに古い井戸が一つありましたよ。……云々

なお、詳しい調べに依ると、実生の小松やら、合歓、女竹、草には薄、苺、蕗の類などが雑生していたというから――慶長十七年の春四月の頃だったという、武蔵と巌流との試合が行われた当時の島の風趣は、ほぼ推測することができよう。

巌流島という名称は、もちろん慶長以後、武蔵と巌流の試合が喧伝されてから後のもので、その以前は、船島とよばれていたし、その船島という名も、附近の俚俗の呼び慣わしで、