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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

で、彼は墨画を主とした。

また彼の鑑画の眼は、その青年期の遊歴中に、自然養われたものだろうと思う。

武者修行と寺院との密接な関係を、ここでも考え合せずにいられない。

短い時は一夜二夜、永い時は半年も一年も、寺院に逗留していたことはままあろう。当時の民間では、容易に見難い名画とか美術品に親しむ機会は、貴顕の門を除いては、寺院のほかになかった。

そこには、中国からの宋、元の名画もあった。また、東山時代の巨匠たちの描いた襖、屏風、幅物などもあったろう。なお、武蔵の壮年期にはなお現存していた海北友松の画も、松花堂の墨戯も、雪舟、雪村あたりの物も、長谷川等伯などの作品も、勿論、しばしば眼にすることができたであろう。

敢て誰の画風ということもなく、武蔵はそれらの画に親しむうちに、いわゆる彼のいう「一道に通ずれば万能に達す――」の信念で、独り描き独り楽しみ、いつとはなく彼の画格なるものができて来たのではあるまいか。またそこには、彼の天質に美を感味する素質と、それを表現する才能が、必然にあったことは勿論としてである。

それと、もひとつは、彼の知己、交友の感化というものも、非常にあったろうと思われる。