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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
第八篇 降矢木家の壊崩
一、ファウスト博士の拇指痕
深淵の中へ墜ち込んでゆくのだった。実に、その消え行く瞬間の光は、斜めに傾いで仮髪の隙から現われた、白い布の上に落ちたのである。それは擬れもなく、武具室の惨劇を未だに止めている額の繃帯ではないか。ああ、オリガ・クリヴォフ。再度法水の退軍だった。斃されたのは誰あろう、彼の推定犯人クリヴォフ夫人だったのだ。
第八篇 降矢木家の壊崩
一、ファウスト博士の拇指痕
こうして、再びこの狂気双六は、法水の札を旧の振り出しに戻してしまった。しかし、その悲痛な瞬間が去ると同時に、法水には再び落着きが戻ってきた。けれども、その耳元に、代り合って這い寄ってきたものがあったのだ。と云うのは、先刻からあるいは幻聴ではないかと思われていた、あの水流のような響だったのである。恐らく角柱のような空間を通ったり、あるいはまた、それに窓硝子の震動なども加わったりするせいもあるだろうが、今度は前にも倍増して、さながら地軸を震動させんばかりの轟きであった。そして、そのおどろと鳴り轟く響が、陰惨な死の室の空気を揺すりはじめたのである。それこそ、中世独逸の伝説――「魔女集会」の再現ではないだろうか。