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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

と鎮子はペテロの言を藉りて、痛烈に酬い返した。そして、

「でも、私が徒らな神霊陶酔者でないということは、今に段々とお判りになりましょう。ところで、あの方はほどなく意識を回復なさいましたけれども、血の気の失せた顔に滝のような汗を流して――とうとうやって来た。ああ、今夜こそは――と絶望的に身悶えしながら、声を慄わせて申されるのです。そして、私と易介を附添いにしてこの室に運んでくれと仰言いました。誰も勝手を知らない室でなければ――という、目前に迫った怖ろしいものを何とかして避けたい御心持が、私にはようく読み取ることが出来たのです。それが、かれこれ十時近くでしたろうが、はたしてその夜のうちに、あの方の恐怖が実現されたのでございます」

「しかし、何が算哲と叫ばせたものでしょうな」と法水は再び疑念を繰り返してから、「実は、夫人が断末魔にテレーズと書いたメモが、寝台の下に落ちていたのですよ。ですから、幻覚を起すような生理か、何か精神に異常らしいところでも……。時に、貴女はヴルフェンをお読みになったことがありますか」

その時、鎮子の眼に不思議な輝きが現われて、

「さよう、五十歳変質説もこの際確かに一説でしょう。