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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

「お乳がおありでございましょうか※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

異様の女はそう云った。

「あッ……まあ……お前様は※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

浮藻は足を止どめ顫えながら、妖怪のっぺら坊さながらに、そうして姑獲鳥さながらに、顔の代わりに白布のある女、そうして両手に嬰児を抱いた女を恐怖をもって凝視した。

「怪しいものではございません。道に迷って山へはいった。子持ちの女乞食でございます」

と、早瀬はおずおずと弁解した。

「この子が可哀そうでございます。……おなかを空かせておりまする。……わたしには乳がございません。……あなた様にお乳はございますまいか」

「いいえ、わたしは……」

と、浮藻は云った。

「まだ娘でございますので。……乳など何んで……何んで出ましょう」

「…………」

早瀬は恥じて辞儀をした。

昼間はほとんど絶対的に、垂れ布をかかげない彼女ではあったが、夜は彼女の世界だったので――というのはいつも垂れ布のこなたで、薄暗く住んでいるがためで、そういう彼女の生きている世界は夜の世界といってよかろう。――だからまして本当の夜になると、彼女は大胆に垂れ布をかかげて、人をも物象をも見るのであった。