輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

でも人はいなかった。

「ご免ください」

と彼女は云った。

「白湯などいただかせてくださりませ」

云い云い彼女は部屋の中へはいった。

と、奥にも部屋があるらしく、そっちから人の気勢がした。

「もし、ごめんくださりませ」

云い云い浮藻はそっちへ進み、隣りの部屋と境いをなしている、なかば外れた戸の側まで行った。

竹の杖が突き出された。

「あッ」

クルクルと体を旋回し、脇腹を両手で抑えた浮藻は、やがて床の上へ仰向けに倒れた。

もう彼女は動かなかった。

しばらくの間は寂然としていた。

松明が灰を一握りよりも多量に、ボッタリと床の上へ落としたばかりであった。

が、やがて痩せた骨ばった、垢づいた腕が隣り部屋から宙を泳ぎながら差し出され、それが浮藻の足へかかった。

浮藻の体は床を辷って、隣り部屋へ引き込まれた。

後はふたたび寂然となった。

窓から部屋の中へ差し出されている楓の、血のように紅い病葉が、吹き込んで来た風に揺れたばかりであった。

「待て小次郎!」

と右衛門の声が、大楠の樹の蔭から響いたのは、風見の袈裟太郎と連れ立って、二条の桂子の館からこの比叡山の裏山の、谷に添った山路を走って来た、土岐小次郎の端麗な姿が、その大楠の樹のすぐの手前まで、馳けつけて来た瞬間であった。