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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

「この姉が許すによって、小次郎と夫婦になるがよいよ。……愛し合って末永くお添い!」

「お姉様!」

と浮藻は咽んだ。

今も彼女は夢を見ているような、そんな気持ちでいるのであった。

小次郎と引き放されて館へ入れられ、綺麗な部屋の衾の中へ入れられ、

「陸奥守様のお伽をするのじゃ」

と、そう侍女に云いきかされた。

(もしそんなことになろうものなら、舌かみ切って死んでやろう)と、心ひそかに覚悟していた。

と、そこへ意外にも、金地院範覚が現われて、自分をいましめ猿轡をかい、地袋の中へ入れた。

それから連れ出されてここへ来た。

その範覚は袈裟太郎だという。

夢を見ているような気持ちであった。

「可哀そうだが旅へおいで」

桂子は二人へ訓すように云った。

「世の荒波に揉まれ揉まれて、立派な人間になっておくれ。……わたしも、わたしも、一人で寂しく、でも清浄潔斎して、やはりお前たちに負けないような、立派な人間になるからねえ」

「お姉様!」

と浮藻は叫んだ。

「旅へなど! ……何んで! ……お姉様と別れて! ……いえいえ妾は! 何んで旅へなど!」

姉に許されて恋しい小次郎と、夫婦になるということは、浮藻にとって、例えようもない、嬉しいことには相違なかったが、この乱れた世に二人ばかりで、当てのない旅へ出るということは、辛い悲しいことであった。