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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

(笠置の城が陥落して、大塔宮様が赤坂の城へ、遁がれてお入り遊ばされたそうな。この御方にお眼にかかり、許すとのお言葉承わりたいばかりに、生きているような自分なのだが、はいったが最後出ることの出来ない、ここの住居へ来た以上、望みは絶えたというものだ! ……では俺は部屋から一歩も出まい!)

それで彼は出ないのであった。

盲目の身の燈火はいらず、部屋の中はほとんど闇であったが、金網をかけた火鉢があって、そこで炭火が盛んに熾っていて、その余光で頼春のこけた頬と、窪んでいる眼との寂しい顔が、赤くポッと見えていた。

不意に廊下から悲鳴が起こり、人の仆れる音が聞こえた。

素早く巻軸を懐中へ入れ、傍を放さない竹の杖を取ると、頼春は立ち上がり、ソロソロと引き戸をひきあけた。

そのほとんど鼻の先を掠めて、丈高い白布が裾を引き、垂直に立ちユラユラと揺れ、廊下を一方へ辷って行き、その後方に近習らしい武士が気絶して仆れていた。

(女が俺の前を通って行く)

頼春はそう思った。

盲目なるがゆえに気絶している武士も、生ける白布の辷って行く姿も、かいくれ認めることが出来ず、盲目になって以来鋭い感覚が、いよいよ鋭く磨ぎ澄まされた、それによって女が通って行くと、かえって真相を識ったのであった。