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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁
頼春はハラハラと涙をこぼした。
「この儀ばかりは! この儀ばかりは!」
「私情じゃ!」
と太郎左衛門は吼えるように云った。
「北殿ご諚は公ごと! 私情をもって拒むとあっては、頼春、せっかくの返り忠むだになるぞよ、水の泡となるぞよ」
「たとえ水の泡になりましても……」
「これ」
と太郎左衛門も涙を眼に溜め、声を沈ませて囁くように云った。
「早瀬の心思わぬか」
「早瀬! ……妻! ……おお妻ゆえに!」
「そちこのご諚拒んだが最後、謀反の心根いまだ消えずと、捕えられて縛り首! しかも頼兼、国長は、運命変わらず討たれるのじゃ!」
「…………」
「そち死なば早瀬は生きていまい」
「…………」
「娘と婿とに先立たれて、ワ、わしも生きていぬ!」
「舅殿!」
「頼春行け!」
「は、はい」
「※悔の道、贖罪の浄め、他にあろう、他日ほかに……」
「は、はい」
「な」
「はい」
とフラフラと立った。
(廃れた武士だ、廃れついでに!)
頼春はフラフラと歩いて行った。
三鱗の旗をたまわって、宮方征討に向かったのは、小串三郎左衛門尉範行と、山本九郎時綱とであった。
従う勢は五千余騎、六条河原へ打って出で、ここで勢を二手にわけ、時綱はそのうち二千余騎を率い、土岐頼兼を討ってとるべく、三条堀川へ寄せて行った。