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せかいのいっかんとしてのにほん

世界の一環としての日本

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《世界の一環としての日本(せかいのいっかんとしてのにほん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,338 字 · 422 頁

青空文庫

マルクス主義は新しい思想でありながらすでに世の中の大勢をなしている。氏の使命はそこでおのずから、この大勢を逆行して見ようということにならざるを得ないではないか。貴族は容易に流行などに動かされはしない、氏はこの点を身を以て証明しなければならない。

偶々学生運動に対して特有に懐疑的な皮肉をもらしたのが導火線で、河上肇博士が『社会問題研究』で、之を槍玉に挙げて了った。骸子は投げられたのだ(現在東京の高師の先生をしている某君が、コーエンなどをかつぎ出してマルクス主義を批判することによって教授の御用を務めようとしたのは、笑い草にはなったが、あまり有効ではなかったようである)。癪に触わるのはマルクス主義者である。だから氏は反マルクス主義者にならねばならぬ。生理上の反抗児は、今や政治上の反動家とならざるを得ない。

だが反動家の歩く道は無限の泥濘である。唯物史観に対抗するために風土史観――之はそれ自身としては良い着想なのだが――が掘り起こされたり、国民性の理論がエラボレートされたりしなければならぬ、これは定石の第一歩だ。氏の「モンスーン説」、人間はモンスーン地帯、砂漠地帯、牧場地帯の三つによって、経済・政治・道徳・文化の形態を決められるという説、はとに角非常に面白いもので、島崎藤村氏などは之を激称したものだ。