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なつむしあんどん

夏虫行燈

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《夏虫行燈(なつむしあんどん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,200 字 · 37 頁

青空文庫

葉隠れ恋

一

――この事件を、知っている者は、あいつ近頃、お小夜どのとの縁談で、ふわふわしているから、こんな失態を起したのだろう――と誰も皆、云っておる』

ちょうど、五刻の鼓が、櫓で鳴った。

『ふーム、そうか。……そういう事情か』

とのみ頷いて、平四郎はただ聞いていたが、平四郎は、決して愉快そうな顔いろではなかった。

『どれ、帰ろうか』

丹治と別れて、彼は、帰途についた。

城の乾門では、果して、奉行の下役が詰めていて、退城の者を止め、いちいち体調べをして通した。

平四郎も、検められた。

『何か、御城内に、変った事でもあったのでござるか』

知らぬ顔して聞くと、

『いや、ちと……』

と、口を濁して、役人たちは、真相に触れることを避けた。

葉隠れ恋

一

――見たことか。人の思いでも。

同僚の前では、そんな顔は見せなかったが、平四郎は心のうちで、そう思わないこともなかった。

甚三郎とは、お互いに、終生、解けない宿怨に結ばれている仲である。

『萩井家のお小夜も思い知ったろう』

星になった夜空の下を歩きながら――彼は苦笑した。

――あの甚三郎さえなければ、お小夜は、自分の妻となっている筈の女だ。