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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
そこへ下男の佐吉も蓑と笠とで田圃の見回りから帰って来て、中津川の大橋が流れ失せたとのうわさを伝えた。
「香蔵さん、大橋が落ちたと言いますぜ。もうすこし見合わせていたらどうです。」
「この雨にどうなりましょう。」と半蔵が継母のおまんも囲炉裏ばたへ来て言った。「いずれ中津川からお迎えの人も見えましょうに、それまで見合わせていらっしゃるがいい。まあ、そうなさい。」
雨のために、やむなく逗留する友だちを慰めようとして、やがて半蔵は囲炉裏ばたから奥の部屋の方へ香蔵を誘った。北の坪庭に向いたところまで行って、雨戸をすこし繰って見せると、そこに本陣の上段の間がある。白地に黒く雲形を織り出した高麗縁の畳の上には、雨の日の薄暗い光線がさし入っている。木曾路を通る諸大名が客間にあててあるのもそこだ。半蔵が横須賀の旅以来、過ぐる三年間の意味ある通行を数えて見ると、彦根よりする井伊掃部頭、江戸より老中間部下総守、林大学頭、監察岩瀬肥後守、等、等――それらのすでに横死したりまたは現存する幕府の人物で、あるいは大老就職のため江戸の任地へ赴こうとし、あるいは神奈川条約上奏のため京都へ急ごうとして、その客間に足をとどめて行ったことが、ありありとそこにたどられる。