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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
半蔵はそんな隠れたところにある部屋を友だちにのぞかせて、目まぐるしい「時」の歩みをちょっと振り返って見る気になった。
その時、半蔵は唐紙のそばに立っていた。わざと友だちが上段の間の床に注意するのを待っていた。相州三浦、横須賀在、公郷村の方に住む山上七郎左衛門から旅の記念にと贈られた光琳の軸がその暗い壁のところに隠れていたのだ。
「香蔵さん、これがわたしの横須賀土産ですよ。」
「そう言えば、君の話にはよく横須賀が出る。これを贈ったかたがその御本家なんですね。」
「妻籠の本陣じゃ無銘の刀をもらう、わたしの家へはこの掛け物をもらって来ました。まったく、あの旅は忘れられない。あれから吾家へ帰って来た日は、わたしはもう別の人でしたよ――まあ、自分のつもりじゃ、全く新規な生活を始めましたよ。」
半日でも多く友だちを引き留めたくている半蔵には、その日の雨はやらずの雨と言ってよかった。彼はその足で、継母や妻の仕事部屋となっている仲の間のわきの廊下を通りぬけて、もう一度店座敷の方に友だちの席をつくり直した。
「どれ、香蔵さんに一つわたしのまずい歌をお目にかけますか。」
と言って半蔵が友だちの前に取り出したのは、時事を詠じた歌の草稿だ。