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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
」
「でも、悪い気持ちはしないでしょう。」と金兵衛は言った。「二本さして、青山吉左衛門で通る。どこへ出ても、大威張りだ。」
「まあ、そう言わないでくれたまえ。それよりか、盃でもいただこうじゃありませんか。」
吉左衛門も酒はいける口であり、それに勧め上手なお玉のお酌で、金兵衛とさしむかいに盃を重ねた。その二階は、かつて翁塚の供養のあったおりに、落合の宗匠崇佐坊まで集まって、金兵衛が先代の記念のために俳席を開いたところだ。そう言えば、吉左衛門や金兵衛の旧なじみでもはやこの世にいない人も多い。馬籠の生まれで水墨の山水や花果などを得意にした画家の蘭渓もその一人だ。あの蘭渓も、黒船騒ぎなぞは知らずに亡くなった。
「お玉さんの前ですが。」と吉左衛門は言った。「こうして御酒でもいただくと、実に一切を忘れますよ。わたしはよく思い出す。金兵衛さん、ほら、あのアトリ(※(「けものへん+臈のつくり」、第3水準1-87-81)子鳥)三十羽に、茶漬け三杯――」
「それさ。」と金兵衛も思い出したように、「わたしも今それを言おうと思っていたところさ。」
アトリ三十羽に茶漬け三杯。あれは嘉永二年にあたる。