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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
いつでも半蔵が心のさみしいおりには、日ごろ慕っている平田篤胤の著書を取り出して見るのを癖のようにしていた。『霊の真柱』、『玉だすき』、それから講本の『古道大意』なぞは読んでも読んでも飽きるということを知らなかった。大判の薄藍色の表紙から、必ず古紫の糸で綴じてある本の装幀までが、彼には好ましく思われた。『静の岩屋』、『西籍概論』の筆記録から、三百部を限りとして絶版になった『毀誉相半ばする書』のような気吹の舎の深い消息までも、不便な山の中で手に入れているほどの熱心さだ。平田篤胤は天保十四年に没している故人で、この黒船騒ぎなぞをもとより知りようもない。あれほどの強さに自国の学問と言語の独立を主張した人が、嘉永安政の代に生きるとしたら――すくなくもあの先輩はどうするだろうとは、半蔵のような青年の思いを潜めなければならないことであった。
新しい機運は動きつつあった。全く気質を相異にし、全く傾向を相異にするようなものが、ほとんど同時に踏み出そうとしていた。長州萩の人、吉田松陰は当時の厳禁たる異国への密航を企てて失敗し、信州松代の人、佐久間象山はその件に連座して獄に下ったとのうわさすらある。