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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《夜明け前(よあけまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 頁
目にあまる街道一切の塵埃ッぽいことも、このにぎやかな祭りの気分には埋められそうになった。
そのうちに、名古屋の方へ頼んで置いた狂言衣裳の荷物が馬で二駄も村に届いた。舞台へ出るけいこ最中の若者らは他村に敗を取るまいとして、振付は飯田の梅蔵に、唄は名古屋の治兵衛に、三味線は中村屋鍵蔵に、それぞれ依頼する手はずをさだめた。祭りの楽しさはそれを迎えた当日ばかりでなく、それを迎えるまでの日に深い。浄瑠璃方がすでに村へ入り込んだとか、化粧方が名古屋へ飛んで行ったとか、そういううわさが伝わるだけでも、村の娘たちの胸にはよろこびがわいた。こうなると、金兵衛はじっとしていられない。毎日のように舞台へ詰めて、桟敷をかける世話までした。伏見屋の方でも鶴松に初舞台を踏ませるとあって、お玉の心づかいは一通りでなかった。中津川からは親戚の女まで来て衣裳ごしらえを手伝った。
「きょうもよいお天気だ。」
そう言って、金兵衛が伏見屋の店先から街道の空を仰いだころは、旧暦九月の二十四日を迎えた。例年祭礼狂言の初日だ。朝早くから金兵衛は髪結いの直次を呼んで、年齢相応の髷に結わせた。五十八歳まで年寄役を勤続して、村の宿役人仲間での年長者と言われる彼も、白い元結で堅く髷の根を締めた時は、さすがにさわやかな、祭りの日らしい心持ちに返った。