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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁
ことで、足が呼吸を止められて喘ぐのが透いて見える。
ようやく川を渉る、足袋底がこそばゆいから、草鞋を釈いて足袋を振うと、粗製のザラメ砂糖のような花崗の砂が、雫と共に堕ちる。
このような川渉りを、幾回もさせられるのである。
三
穂高山の前面に来る。
河原を切れて処女の森の一つに入る、白檜の森は、水のような虚空を突き、空のような水の面を伺い、等深線の如く横さに走っている、森の中の瀝青のような、玄ずんだ水溜りは、川流が変って、孤り残された上へ、この頃の雨で潦となったのであろう、その周囲には、緑の匂いのする、黴の生えた泥土があって、踝まで吸いこまれる、諸君は深山の沼林の寂蓼を味いたることありや、何年かの落葉(七葉樹だの、桂だの、沢栗だの)の、肉が消えて網のような繊維ばかり残り、それも形がおぼろになって、この沼の中に月の光を浴び、甘き露を舐めた執念が残っている、落葉、落葉、また落葉、生々しい青葉は無色になり、輪廓ばかりの原画になって、年々無数に容赦なく振い落される、いつか冬の野原で、風もない、微とも動かぬ楢林の中で、梢にこびりついている