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あずさがわのじょうりゅう

山岳紀行文集 日本アルプス

小島 烏水

線上閱讀小島 烏水《山岳紀行文集 日本アルプス(あずさがわのじょうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,795 字 · 274 頁

青空文庫

ともかくも、赤く焼けてくすぶった熔岩や、白ッちゃけた岩脈のくずや、黒い小粒の砂礫が、無秩序に積み累ねられたところは、九千尺に近い山中というよりも、かきや蛤の殻を積み上げた海辺にでも、たたずんでいるようであった。

お中道めぐりの時は、ここから御殿場の三合目の小舎に出て下山したが、これより先、大宮口から茨木君と長男を連れて来たときは、この大宮口の五合目の室から六合七合と登った。そして七合五勺の室へ来て、海抜三千二百米と、棒杭に註されたのを見たとき、私は身の丈が急に高くなったような気がした。何故ならば、日本のあらゆる高山の絶頂を私たちは、もうここで超越しているからだ。南アルプスの白峰、北岳、間の岳にしても、北アルプスの槍ヶ岳、穂高岳にしても、三千二百米の高さには達していない。七合五勺で、日本アルプスの最高点以上の空に浮かび上っているのだ。「高いなあ富士は」と叫んだ、「そして大きい」とつけ足した。

八合目の少し下に鳥居があって、八合目からは浅間神社奥宮の管理に移っているのだそうだ。頂上からかけて、七合下りまで、銀流しの大雪が、槍ヶ岳の雪渓にちょっと似ているが、八月半ごろまでには大抵溶けて、九合目以上のと、内院火口にへばりついている残雪だけが、万年雪として残るらしい。