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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《山彦乙女(やまびこおとめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 頁

青空文庫

二

半之助は黙って、微笑しながら見ていた。

「あたし来たでしょ」

近づきながら、花世は自慢そうに云って、ぱちぱちとまたたきをしながら、つぶらな眼でこちらを見た。

「待っていて下すった」

「このとおり」

半之助はこう答えながら、岩の食卓をさしてみせた。

二

花世は、よろしい、というように頷き、給仕は自分がする、と云って、さも心得がおに、飯や汁の、鍋の蓋を取り、出来ぐあいをしらべてから、それらを椀に盛った。……このあいだも、絶え間なしに、なにか云い続ける。付きまとう小鳥たちを叱ったり、追うかと思うと呼んだりする。

「だめ、そんなにおちびさんをいじめないの、お鍋へ落ちるわよ、るりさん、火傷したらどうするの、ちゃんと肩にとまって」

二人分の用意が出来ると、岩を中に、半之助と向きあって坐った。

「あたし御飯やお汁のよそいかた上手でしょ、さあめしあがれ」

そして半之助に給仕をし、自分も喰べながら、ぜんぜん突拍子もないようなことを、次から次と、話し続けるのであった。

花世がなにか話しているあいだは、半之助は自由にものを考えることができる。それというのが、彼女のおしゃべりは、自分の空想に自分で酔うのであって、相手がそれをどう思うかも、はたして聞いているかいないかも、まったく問題ではないらしいからであった。