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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

堀の小説にはそのフンイキが出ていて、若い女の人が好んで彼を愛読しているのも、そのためである。いまだに彼の住んだ追分の家を尋ねて来て、草のうえに坐って見たり、家のまわりで何か見ようとして廻って歩いたり、また、ふいに玄関に訪ねて来る何々という博士も居れば、団体の群から四、五人飛び出してくる人もいた。どの人も死んだ堀のいた処が見たいのだ、ただ想像しただけでは何も捉まえられないからである。

私はたえ子夫人に、入口の道路がかなり手広だから、彼処に若い楓の並木を作って、すずしいかげが夏は斑に道ばたにうつるようにして見なさい、ベンチも一つ置いて腰かけて憩むようにするといいね、そこで旅行者は何でも好きなように連れと話をしてもいいんだから、来年の夏にはそうしなさい、此処は追分の公園みたいなところだからというと、たえ子はおじさんに指図をしていただけるなら、楓の並木を作ってみるわ、と、彼女もその気になって言った。

軽井沢の夏の私の家に来て、これから堀さんの家を見たいという客があると、私はその客を追分の町にあんないして行ったが、そのたびに景色を褒め、埃立った田舎の町まで客は褒め、あんない役の私は一夏に二度は訪ねてみるようになっていた。