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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

「耳はないのか。猿」

「ばかッ」

「何」

「ひとを呼び止めておいて、たわ言も程にいたせ。猿とはなんだ」

「そちのことを、誰も皆、そう呼ぶゆえにわしも呼んだまでだ。わしは、鳴海城のほうに多くいるから、そちの姓名などよく知らん。それゆえ、人がよく呼ぶように呼んだのが、悪いか」

「悪いッ。――何と呼ぼうと宥していい人間と、宥されぬ人間とがある」

「然らば、わしは宥されんというのか」

「そうだ」

「ひかえろ。許されんのは、そちの不遜だ。毎朝、出仕の折、何で普請の御用材を、踏み跨いで通るか。われわれに会釈せんか」

「それを咎めるのか」

「礼を弁えんやつだ。侍になりたてのそちゆえ、いうて遣わすが、礼儀は武士の重んじるものだ。……それにだ! よく貴様は、ここを通行の際、工事の体を、したり顔して眺めていたり、口のうちでぶつぶつ申したりしておる様子だが、すべて、城の工事と申すものは、戦場と同じ御規則の下にいたしておるのだぞ。不届きな奴め。――以後再びそのようなことがあると、ただはおかぬから左様心得ろ!」

呶鳴りつけて――

「いや、草履取などから、士分に成上がったりなどすると、すぐこうなるから始末がわるいよ。