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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

右近は、憤然と、床几を蹴って立ち上がった。

「とるに足らぬ軽輩と、わしが許しておけば、よい気になりおって、不! 不埒な奴だッ。――作事場には、陣中同様な軍律があるのだぞ。うぬ、斬り捨ててくれるから、それへ直れ」

太刀へ手をかけた。

それでも、相手の顔いろも、棒をのんでいるような体も、びくとも動かないので、右近は、なお躍起に、

「捕えろッ。処置いたすから、逃がさぬように引っ捕えろ」

と、どなった。

右近の家来は、すぐ藤吉郎のそばへ寄った。藤吉郎は、黙って、寄り付こうとする者たちを、嗅ぐように見廻した。――妙な男だとさっきからその心理を疑っていたので、何か不気味で、側へは寄って、彼を囲む構えは作ったが、ひとりも手出しはしなかった。

「右近殿。おぬし、大言は上手だが、することは下手だのう」

「な、なんじゃと」

「お城の工事は、軍律も同様な御制度でするという理は、何のためにある規則か。それも口では云いながら、分っておらんのじゃないかな。――心ぼそいお奉行よ。おかしくなって笑ったが悪いか」

「聞捨てならぬ暴言。うぬ、奉行たるわしに向って」

「聞けよ、まず!」

藤吉郎は、胸を張って、あたりの顔を見まわしながら演舌した。