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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

「御城内の前田犬千代」

といった。

行水から上がって、縁側で浴衣を着ていたこの小屋敷の主は、そこから表をのぞいて、

「やあ。やあ。――誰かと思ったら犬千代か」

無造作に、どなった。

「上がられい。さあ、奥へござれい」

と、自分で敷物など直した。

犬千代は、坐りこんで、

「突然に出向いた」

「めずらしいお越し。――何ぞ急用でも」

「いや、わしの用事ではない。おぬしのことでだ」

「ほ……?」

「ひと事のような顔されるが、それどころではおざるまい。大変な確約を結ばれて、犬千代ですら、陰ながら憂いにたえない。おぬしのことゆえ、充分、成算はあってのことだろうと思うが」

「あ。工事のことでござるか」

「いうまでもない。よしもないことを云い出され、御主君におかれてさえ、人ひとり、要らざることで、腹など切らせとうない――といったようなお顔いろであった」

「三日といってしもうたのでな……」

「成算は、あるのか」

「ない」

「ない?」

「もとより、お城の工事など、てまえは皆目、素人でござれば」

「で、どうするおつもりか」

「ただ、普請に働くものは人間だから、その人間を、完全に使えば、人力の及ぶところまでは出来得ると信じておる」