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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

「すべて、殿の御見解がちがいます。憚りながら、谷忠兵衛は、槍先の功を競う雑兵ではございません。一国の老臣です。老臣の任は、国の危急存亡に際して、よくその処断をあやまらず、国の滅亡を支えて、領土の民の安穏を保つにあると信じますので、これへ参って、殿のお怒りにふれても、所信をとおす覚悟にございます」

「いかに口賢く申しても、元親は断じて、秀吉に降は乞わぬ。一ノ宮へは、他の者を守将にやる。そちはもう行くな。忠兵衛、謹慎申しつけるぞ」

「せっかくですが、お国存亡のとき、安閑と謹慎はしておられません。どうか日頃の御賢明に返って、お考え直し下さい。……今、降伏すれば、まだ土佐一国と、長曾我部家は残ります。しかし、最後のところまで戦ってしまったら、何が残りましょう」

「そちは一体、武門の男か」

「天晴れ武門の柱石と任じております。勝とう勝とうは武門の空念仏。ひとりぐらいは、負けかたの良し悪しを考える御家臣もあってよろしいでしょう」

「そちは、この元親を、愚弄しおるな」

「もってのほかな」

と、忠兵衛は、かれの嚇怒をおそれるどころか、かえって、ジリジリと膝を突きすすめた。

「およそ、真に国を愛する者には、愛する国土を用いて利のない盲戦はやれません。