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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
「関白です。いっそ、関白にお就きになったらよいではありませんか」
「関白。なるほど」
子どもが、欲しる物を、鼻さきに見たように、秀吉の顔に、ぱっと、意欲の血が赤くさした。
「……だが待て、菊亭どの。その関白職はいまふさがっているではないか。二条関白昭実と申す、現職の者がおるぞ」
「折もよしです……」
と、晴季は人のわるい微笑を見せて、しばらく秀吉をにたにた見まもった。当今、大坂城の主の声といえば、公卿百官はもちろん、天下の諸侯もみな慴伏せぬはないが、晴季から見ると、まるで児童のように他愛もないのだ。自分の手の上に置いたようなものだった。――こういう快味を、晴季はしばらく心のなかで愉しんだ後、
「実は、その関白の位は、二条どのから近衛信輔どのへ、もう疾くに、譲るべき順位になっているのです。ところが一方は、現職に恋々として、いっかな、辞任の色もありません。為に、近衛派と二条派との間に、先頃からいろいろ暗闘沙汰が生じておる。……何と、乗ずべき機ではございませんか。横から、漁夫の何とかをお占めになる。これは、あなたなら易々としてお出来になるはずでしょう」
菊亭晴季が京都へ帰ってから約一ヵ月後だった。